忍者ブログ


きのこの森

  
きのこの森とは、高野水登が主宰するコメディ多めの演劇団体。
そんなきのこの森の活動記。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

  • 04/26/16:18

劇中劇の全文掲載

こんにち繁忙期。いつか私にも訪れるのでしょうか。





主宰です。





公演も終わったことですし、舞台裏の話を書いていこうと思います。





主に、シェイクスピア様ご乱心をご覧になった方向けの内容になるかとは思いますが、観ていない方も、読んでいただくと、なんでしょう、情熱大陸とかで舞台裏みてその作品に興味沸くとか、そういうことが起これば素敵だなと思います。







今回の芝居は、「シェイクスピアの幻の新作が発表されるも、それがクソつまらなかった」というのはあらすじにも書いた通り。





幻の新作は、劇中劇としてその片鱗が垣間見えます。





これを書くのが本当に大変でした…。





最初は、実際のシェイクスピアの作品から色々引用して、切り貼りしたものにしようと思っていたのですが、それだと「シェイクスピアの新作」という部分の説得力が無くなるので、イチから自分で書きました。





時間がないので誰かシェイクスピアに詳しい人に頼るわけにもいかず、必死にそれっぽいセリフを考えて書くだけでも、一ページ書くだけで2~3時間はかかりました。





「シェイクスピアが書いた」と、少しでも思えるようなものにしなければならないので、実は一番時間をかけて書いています。





また、それっぽくみせるための工夫もしました。





「最初に本物のうじ虫をみせておけば、それ以降はパスタで代用してもうじ虫にみえる」





去年公開の、塚本晋也監督の映画「野火」のできるまでを追った記事で、このようなことが書いてあり、参考にしました。
死体に群がるうじ虫を表現する際に用いたテクニックだそうです。
※ちなみに、「野火」は、去年みた邦画の中で最もショックをうけ、最も優れていた映画だと思います。





「最初にロミジュリのセリフをみせておけば、それ以降は大学生が書いたもので代用してもシェイクスピアのセリフに見える」





そういう、技術的な点からも、冒頭にロミジュリのシーンが入ったのです。その後伏線にもなりますが。





そんなわけで、実はどうでもいい劇中劇にこそ、時間と労力をかけていたわけですが…





全然指摘されない……。





いや…指摘されないほうが、こう、溶け込んでたと言えるわけですから、そっちの方がいいはずなんですが…。





観劇した母に「あれは、シェイクスピアの何から引用したの?」と言われた時も…まぁ…やった!バレなかった!と思えばいいんでしょうが…





私はみみっちい人間です。





自己主張がしたい!






というわけで、無理矢理「劇中劇の内容がもっと知りたかった」という意見が多数寄せられたという体で、劇中劇の内容と、そのちょっとした解説をしたいと思います。






芝居で出てきた順番ではなく、劇中劇の時系列順でのせます。







主な登場人物

ソフィア

アレキサンダー

ペリグーナ

フリストス






乳母
「お嬢様、どうかお聞きわけください」

ペリグーナ
「いやよ。ああ考えるだけでおぞましい。まるで芋虫のように節くれだった指」


※無理やりオッサンとの結婚を決められてしまったペリグーナが、文句を言っているみたいですね。ちなみにペリグーナはフリストスのことが好きです。





ペリグーナ
「ああソフィア。あなたの耳はもう硬く冷たい石の扉で閉ざされてしまったのね。
せめて旅立つ前に、友の忠告を聞く分別も持ってはくれないのね」

ソフィア  
「ええ、私は耳をふさぐわ。
乙女の純真を惑わす悪魔が入り込まぬよう。
私は口をつぐむわ。
愛の矢を持つキューピッドが、気まぐれを起こして出て行ってしまわぬよう
閉ざした扉は決して開かない。
彼が耳元でそっと、開けゴマと囁くまで」


※家の都合でアレキサンダーと結婚できないので、駆け落ちする決心をしたソフィア。それをペリグーナが止めようとしていますね。





アレキサンダー 
「フリストス、道を開けてくれ。でなければおれはこの剣を友の血で汚さねばならない」

フリストス
「それはおれとて同じこと。剣を抜け。決着をつけよう」

ソフィア
「お願いよフリストス。目を閉じて、ほんのひと時でいい。私たちの姿は、森の影が見せた幻」

フリストス
「ひとときの闇が、おれにとっては永遠の闇だ。
剣を抜けアレキサンダー。決闘だ!」

殺陣

ソフィア
「ああ、月明かりを雲が遮る」

フリストス
「どこだ、見えない」

アレキサンダー
「今のうちに行こう」

フリストス
「待て、逃げずに戦え。アレキサンダー!」


※フリストスはソフィアのことが好きなので、アレキサンダーをぶっ殺して駆け落ちを阻止しようとしていますね。
フリストスは鳥目なんですかね。




ソフィア
「怖いのアレキサンダー。このまま目を閉じたら、また鳥籠の中で朝を迎えることになるんじゃないかしら。まるで夢から覚めたかのように」

アレキサンダー
「ならば今夜は、互いの心臓の鼓動を確かめ合いながら眠ろう」

ソフィア
「いけないわ。結婚前の紳士、淑女としてふさわしくない」

アレキサンダー
「では、おれが夢の中で君を追いかけているころ、闇夜に潜む獣が君を連れ去ってしまうかもしれない」

ソフィア
「どうしていじわるを言うの?」

黒い影が二人の前を横切る。

ソフィア
「あれはなに?」

アレキサンダー
「何者だ! 人か、獣か、はたまた化物か」

ブヒブヒ

アレキサンダー
「豚だ」

ソフィア
「いいえアレキサンダー、あれは神の使いよ。 
運命の女神ノルンが、旅路の果ての不吉を知らせに来た!」

アレキサンダー
「木々のざわめきは風のしわざ。
魔物と勘違いさせるのは臆病風のしわざだ。
追い風を吹かすのは、ソフィア。真実の愛だけだ」

ソフィア
「まことの恋か幻か、お裁きになるのは誰?
真実の愛を誓い合った男女に、神がこれほど残酷な仕打ちをする、道理を教えて。
でなければ、北風に丸裸にされ、寒さに凍える心を溶かして。
私の太陽」

※やりたい盛りのアレキサンダーが、ソフィアの不安につけこんでイチャイチャしようとしていますね。夏の夜の夢でみたことのあるようなシーンです。





ソフィア
「姉妹の誓いを交わしたあなた、これ以上私たちを痛めつけないで。
あなたは私にない全てを持っている。
私にあってあなたに無いのは、アレキサンダーへの愛、ひとつだけ」

ペリグーナ
「愛はすべてに勝るもの。失えば私は泥人形よ。
どれだけ泣いてみせたところで、あなたの悲しみは薄化粧。
涙ではがされ、よく見える。
にやつき、いやらしい、勝ち誇った顔!」

フリストス
「ペリグーナ、君はひっこんでいろ。
でないと僕の分別と裏腹に、心が剣を抜いてしまうかもしれない」

ペリグーナ
「ああフリストス。
あなたはたとえ、この女の行く先が地獄とわかっていても、
喜んでついていくのでしょうね」

フリストス
「地獄でない愛があるとしたら、教えてほしいものだ」

ペリグーナ
「この豆粒女のどこがよくって?」

ソフィア
「豆粒ですって?」


※駆け落ちしたソフィアを追ってきたフリストス。そのフリストスを取り戻すために、駆け落ちを密告したペリグーナ。なんやかやあって森で全員再会したところですね。





アレキサンダー
「おおなんということだ。
もし神をこの目で見ることができたとしたら、人とは似つかぬ、化物のような姿かたちをしているに違いない。
神は、その分身として人をつくったなどと戯言を吐いたのは誰だ。
それが確かなら、どうして自らの分身にこれほどの苦しみを与えられよう。
不吉を孕む黒雲から放たれる稲光が肉を焼こうとも、
命摘み取る冬が氷の刃で骨を切り裂こうとも、
今のおれは痛みを感じることはないだろう。
死に追いやられたのはこのアレキサンダーであってアレキサンダーではない。
ナイフでは届かぬ、心の臓腑のさらに深く
神よ、このアレキサンダーの、魂から殺そうというのか」


※アレキサンダーとソフィアは、追手から逃げるうち夜の森の中ではぐれてしまいます。
ソフィアはフリストスと会ってしまい、その場でフリストスに、アレキサンダーが追手に捕まり殺されたことを告げられます。しかし、これはソフィアを連れ戻すための嘘です。
ソフィアはそれを聞いて自殺。
フリストスは、嘘ついて愛する人を死なせてしまったので自殺。
たまたま出くわしたペリグーナも、密告したことに責任を感じ、自殺。
そこにアレキサンダーがやってきたというシーンです。
本当にどうしようもありませんね。





老人
「時は満ちた」

アレキサンダー
「誰だ! その影は、人か、獣か、はたまた化物か。
闇を盾にしておれを翻弄する、卑劣なやつめ。姿を現せ!
死神ならば用はない。おれの胸を探ってみろ。
そこにあるのはがらんどうだ」

老人
「私は神だ」

アレキサンダー
「神」

老人
「又の名を、デウス・エクス・マキーナ」

アレキサンダー
「デウス・エクス・マキーナ」

老人
「左様」

アレキサンダー
「機械仕掛けの神か。愚か者たちの最後の寄る辺」

老人
「人にもたらす唯一にして無二の天啓。
英雄と同じ名を持つ若者よ
おまえの悲劇はしかとこの目で見届けた。
そこでわし、デウス・エクス・マキーナが
絡み、ほつれ、入り乱れた運命の糸を
調子っぱずれの因果の旋律を
果てなき砂漠を踏みしめてきた人生の道程を
あるべき姿に戻してやろう」

アレキサンダー
「腐りかけの果実のように甘い罠だ。
考えを持たぬ虫けらならば誘われようが
絶望の中では蜜の甘さなど惜しくはない。
失せろ、悪魔め」

老人
「おまえの足元に芽吹く奇跡は、果たして悪魔の所業かな。
しかとその目で確かめるがよい」

ソフィアが起き上がる。

ソフィア
「アレキサンダー、いるならその牡鹿のように気高く、か細い声を私に聞かせて」

アレキサンダー
「ああ、失ったはずの心臓が早鐘を打ち始める。
はるか彼方、太陽を飲み込む水平線のさらに向こうへ、
理性を投げ捨てて叫びたい。
来世に希望を託したはずの
愛する人の名を叫びたい。
ソフィア!」

ペリグーナとフリストスが立ち上がる。

ペリグーナ
「庭先にミソサザイが朝露を飲みにくるように
ナイチンゲールの歌声が闇夜を知らせるように
奇跡とはなんとあっけなく
当たり前にやってくるものなのかしら」

フリストス
「今はただ歓びを分かち合おう。
覚めない夢も、あるかもしれない」

村の少年
「祭りだ! 祭りだ! わ―い! わ―い!」
※デウス・エクス・マキーナは、機械仕掛けの神様なので、他の神様と違い、人間に都合のいい神様なんですね。
ギリシャ悲劇でも、ラストに出てきて、全部解決して去っていったりします。
笑いながら書いてました。
つまらないホンを進んで書き、それを茶化せるので、楽しくて仕方なかったです。
これがラスト。非の打ちどころのない酷さですね。
しかもBGMが実写版進撃の巨人のエンディングテーマですよ。
抱腹絶倒ですね。





~改訂後~

アレキサンダー
「(前略)
魂から殺そうというのか!」

フリストス、ペリグーナ、ソフィアの魂が立ち上がる。

フリストス
「果てなき決闘をはじめよう。
覚めない夢の中で」

ペリグーナ
「地獄でない愛があるとすれば、
教えてほしいものね」

ソフィア
「来世に希望を託しましょう。
死とは夜、やがて明けるもの」

魂たちがアレキサンダーにまとわりつく。

ソフィア
「愛を誓ってアレキサンダー。永遠に続く時の中で」

アレキサンダー
「誓うものか。
永久の愛とは、いつか交わる平行線だ。
永遠の中に価値はない。
価値のない愛に、意味などない」

ソフィア
「ならば、永遠の中に生きる神は、真実の愛を知らないとでも?」

アレキサンダー
「そうだ。だから神は人を殺す。
恋人たちのきらめきに嫉妬して」

ソフィア
「永久の眠りがふたりを分かつ
それこそが、真実の愛の証」

アレキサンダー
「目が覚めたかい、ソフィア。
神がそれを望むなら。
愛が地獄というならば。
ならば死ね、アレキサンダー!
だがこの命、ただでくれてやるほど、
俺は美しくない」

アレキサンダー、魂をなぎ倒し、ソフィアを抱きかかえる。

ソフィア
「これは、夢?」

アレキサンダー
「ああ、悪い夢だ」


※書き足したシーンなので、文体がよくわかりませんね。シェイクスピアなんだか、アングラなんだか…。
ちなみに、書いてる時に、川鍋くんに、何か言いたいセリフは無いかときいたら、
「いつか交わる平行線って言いたい!」
と言われ、聞かなきゃよかったと思いながら頭抱えて書きました。
「ならば死ねアレキサンダー!」は、「ならば死ねシーザー!」をやりたかっただけです。








いかがでしたか?





夏の夜の夢からパックを抜いただけの内容ですね。





こんな、茶化すためのくだらない劇中劇に、実は一番苦労していたのです。





これで無事成仏できます。





それでは、また次回。





※こんなもの使う人もいないと思いますが、一応、無断転載、無断使用は禁止させていただきます。
こんなこと書くなんて、傲慢で恥ずかしいのですが、よろしくお願いいたします。
PR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
URL
FONT COLOR
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら